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『津軽』


太宰治の『津軽』を読み返した。
この旅日記風の小説は、中盤でヘンな話がある。
太宰治と友人二人は、偉いお坊さんがいたという有名なお寺へ向かうのだけど、その途中、なにを思ったのか太宰治は鯛を買ってしまう。あの魚の鯛である。そして、大ぶりな鯛を手にぶらさげたまま、お寺に行くはめになり鯛の扱いに窮する。

 「二尺の鯛をさげてお寺に行くのは奇怪の図である。私は途方にくれた。」
 「とうとう私は二尺の鯛をぶらさげたまま、お寺の境内にはいってしまった。」

この時、太宰治は三十五歳位か。
なにやってんだ、と笑ってしまう。

この挿話は、フィクションだろうと睨んでいるのだけれども、創作か実話かという問題はどうでもよくて、それよりもこれから後、『斜陽』『人間失格』という作品が生まれるということを考えた場合、一抹ながらも強く光るようなさびしさを思わせる。そのさびしさは人間誰しもがもつさびしさじゃないだろうか。
いつどうなるかわからない…… 。

ともあれ、この作品においては、彼の他作品にあるような、「罪」、やはりそれに付随する「救い」といった主だったテーマは人間喜劇の合間にひっそりと影を潜めていて、作者がのびのびと仕事をした様をおおいに感じる。
だからこそユーモアがいつも以上に発揮されているのさ。
だからいい。


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2016/04/11 00:11 |COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

見当はずれの代償行為


古本屋で建築家フランク・ロイド・ライトのドローイング集を見つけた。
素晴らしい内容だった。美しかった。
値段を見ると一万二千円。買えない値段ではないけれど、躊躇するには充分の値段だ。
迷いに迷った挙句、あきらめた。
一過性の感動である可能性もあるからだ。

店を出て、駅へ向かう途中、やっぱり欲しくなってきた。
自分の部屋でコーヒーなんかを飲みながら、あの本を開くのはとても素晴らしいことに思えたからだ。
けれども、店に戻ったら閉店してしまっていた。
そういうことだってあるんだろう。

帰りにコンビニに寄り、プッチンプリンを大人買いした。
見当はずれの代償行為かもしれない。


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2016/03/22 00:05 |COMMENT(2)TRACKBACK(0)  

『スティル・ライフ』


スティル・ライフ (中公文庫)スティル・ライフ (中公文庫)
(1991/12)
池澤 夏樹

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好きな小説に池澤夏樹の『スティル・ライフ』がある。
この本を初めて手に取った時の状況を覚えてはいないが、たぶん冒頭の文章に感動したのだ。引用する。

 この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。
 世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。
 きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。世界の方はあまりきみのことを考えていないかもしれない。

 でも、外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。
 大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並びたつ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。
 たとえば、星を見るとかして。

 二つの世界の呼応と調和がうまくいっていると、毎日を過すのはずっと楽になる。心の力をよけいなことに使う必要がなくなる。
 水の味がわかり、人を怒らせることが少なくなる。
 星を正しく見るのはむずかしいが、上手になればそれだけの効果があがるだろう。
 星ではなく、せせらぎや、セミ時雨でもいいのだけれども。


この瑞々しい純度の高い詩のような文章の後に、物語は始まるのだけど、
この冒頭部の軽やかなリズムと空気と宣言が、作品全体の底流にあると感じる。

主人公と<佐々井>の奇妙な友情。
外側の世界と内側の世界の均衡。
理科と文学の融合。

俺はこの作品を語る術を持たない。

ともかく俺はこの作品を素晴らしいと思っている。
あなたは素晴らしいと思わないかもしれない。
水の好みも人それぞれだろうから。
いずれにせよ、読んでみなければ分からないことだ。




2014/12/01 06:53 |COMMENT(2)TRACKBACK(0)  

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