ないものねだり


ステファヌ・マラルメの「世界は一冊の書物に至るために作られている」ではないけれど、その一冊だけで他の本はいらないというような究極の一冊というものは、あるのかもしれないし、ないのかもしれない。ただ、心のどこかではそんな一冊を見つける為に、読書を続けているのではないのだろうかと思う時がある。
しかしその一方で、やはりそんな一冊は存在し得ないのではないかという気がするのだけど。

それは人によって違うだろう。ある人にとっては『聖書』で、ある人にとっては『カラマーゾフの兄弟』で、ある人にとっては『魔の山』で、ある人にとっては『イリュミナシオン』で、ある人にとっては『純粋理性批判』で、ある人にとっては『緋色の研究』で、ある人にとっては『カーマスートラ』で、ある人にとっては『コボちゃん』だっていうこともあるだろう。

無理に一冊に絞ることもないのだけれど、我々に与えられたポケットの数は限られているので、あれもこれも持ち歩くことはできないわけだ。この世に途方もないほどの無数の書物が存在する以上、そういった一冊に出会えた人間は相当に幸福な人間だといえるんじゃないか。


書物ではなくゲームソフトの場合を考える。
現時点で存在するのか知らないし、未来のことかもしれないが、それは書物よりもかなり高い確率で存在し得るのではないかという感覚がある。
究極のゲーム。それは多分、永遠に飽きることのないという要素も必要だろう。
そう考えると、やはり無理だろうかという気にもなってくるが、過去に「これは永久に飽きないんじゃないか」という瞬間を得られたソフトはいくつかあった。例えば、『シヴィライゼーション』。例えば、『パワフルプロ野球』。例えば、『風来のシレン』。例えば、『ネオ・アトラス』。結局のところ、それは錯覚に過ぎず、いずれプレイすることはなくなったのだけど。

要するに、書物にしたってゲームにしたって何にしたって、俺は「永遠」が欲しいのだろう。



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2016/08/31 04:18 |雑記COMMENT(2)TRACKBACK(0)  

リバーブの効いた笑い声


おかしいと思っていた。
先週の月曜日に痛めた腰がほとんど治らない。前回ぎっくり腰になった時は、痛さのピークは3日ぐらいで過ぎて、それを境に急速に回復していった記憶がある。今回は違う。いつまで経っても治らない。寝ても寝ても治らない。前回のごとく寝て朝起きたら驚くべき回復をしているのだろうと思いながら、何も変わらず日々が過ぎていった。夏も終わりそうだ。そんなこんなで一週間である。もちろん、一週間の間、ずっと安静にしているし、外出も一回もしていないし、ヒゲさえ剃っていない。外の空気を吸う、という当たり前のことができないのは思いの外気分を滅入らせる。

問題は、ずっと休んでいるほど世の中は甘くないということだ。それにいっこうに回復の兆しがないのはただのぎっくり腰じゃない可能性がある。例えば、椎間板ヘルニア。ネットで症状を調べれば調べるほどその可能性が高いような気がしてきた。となると、手術だろうか、それは切開だろう、入院もしなくちゃならないだろう、費用はいくらなんだ、と様々なネガティブな思考がぐるぐると頭を駆け巡る。とにもかくにも、俺は文字通り「重い腰」を上げて、暗澹たる気持ちで病院に向かった。


以下、医者とのやりとり。

「痛みとしては去年なったぎっくり腰と同じ感じで……」

(レントゲンを見ながら)「はい、今回もぎっくり腰ですね!」

「あ、そうですか(安堵)。ヘルニアとかじゃないんですね?」

「ぎっくり腰です。ヘルニアだったら足なども痛くなるし、歩けないよ! ガハハハ!」


医者の患者を見下したようなリバーブの効いた笑い声が今も頭に残る。こんにゃろー。
患者の無知や不安を忖度できない医者というのはどうかと思うね。
いずれにせよ、ただのぎっくり腰で良かったけれど。



2016/08/29 21:19 |雑記COMMENT(6)TRACKBACK(0)  

ぎっくり腰ふたたび(ハーゲンのダッツ)


人生初のぎっくり腰になったのは、去年の10月だっただろうか。
ぎっくり腰というのは再発性が高く、1年以内に再発するパターンがかなり多いらしい。
そんなことを知って、俺はいつ襲ってくるか分からないぎっくり腰に怯える日々を過ごしていたわけだけど、一昨日、冷蔵庫の一番下のドアを開けてアイスを取ろうとした時に、腰におそろしい電撃が走った。咄嗟に「あぁ、これはまたやってしまったな」と思った。柄にもなくハーゲンダッツを食べようとした俺に罰が下されたのかもしれない。

そんなわけで、ぎっくり腰になって二日目である。トイレ以外はずっとベッドで横になっている。無論、風呂も歯磨きも出来ていない。ついでに風邪も引いてしまって、ダルく、鼻水が出るし喉も痛い。ぎっくり腰と風邪の合わせ技。これがなかなか厄介で、くしゃみや咳をすると同時に腰に激しい電撃が駆け巡る。俺は何度もピカチュウの幻影を見た。

ヨーロッパの一部ではぎっくり腰のことを「魔女の一撃」ともいうそうだ。なかなか上手いことをいったものだと思う。不穏な力を纏った禍々しい魔女が、渾身の一撃を俺の腰に食らわし、腰痛のみならず風邪の諸症状をも俺にもたらしたと考えれば、我が身に振りかかる災厄も魔女の超自然的な悪意のなせる技として諦めがつきそうな気がする。そんなワケない。


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2016/08/24 00:16 |雑記COMMENT(6)TRACKBACK(0)  

たこ焼きの蜃気楼


ふと、たこ焼きが食べたくなった。
どうせ食べるなら美味しいものを食べようと思い、「佐賀県 たこ焼き」で検索したら、食べログのランキングが出てきて、その第1位が比較的近所のスーパーマーケットの入り口に店を構えているたこ焼き屋だった。灯台下暗しとはこのことか。

俺は別に食べログ至上主義ではないけれど、全く当てにしていないわけでもない。今日の気温は37度という鬼のような暑さで、そんな日にわざわざアツアツのたこ焼きを食べるのも一興だろう。そう思って、さっそく買いに行った。自慢の軽自動車をカウンタックのようにぶっ飛ばして。

店は狭く小さい。店の主であろうほっかむりを被った70歳か80歳ぐらいのけっこうなおばあさんが若いアジア人女性2人を従えて、店を仕切っていた。たこ焼きを1パック注文すると、焼き上がるのに10分ほど要するとのことで、俺はレジの横に置かれたボロボロの丸椅子に座って待つことにした。

人気店であり、また日曜ということもあって、俺が待っている間も客が次々とやってくる。たこ焼きを求める客がスーパーの入り口に群がり、膨れ上がる。外気と鉄板と人間の熱気で地獄のように暑い。しまいにはおばあさんのキャパが限界を迎えたらしく、新しく来た客に「もう売れません」とまさかの販売拒否をしていた。当然、客は「なんで?」と聞いていた。「もういっぱいいっぱいやけん」とおばあさん。「待てばいいとやろ!?」と食い下がる客。

そうこうしているうちに、俺の注文分が出来上がったようだ。1パック8個入りで400円である。安い。イートインのコーナーはないので、車に戻り、すぐに運転席で食べた。美味しい。さすが1位だ。外側が最近主流のカリカリではなくて、ふんわりと柔らかく、中はトロトロだ。たまにソースの味ばかりがするたこ焼きがあるが、この店のはそんなことはなかった。

ふと店の方を見ると、さっきの客とおばあさんがまだ問答をしているようだった。この暑さでも、たこ焼きを求める執念はよほど強いと見える。罪深き食べ物である。俺も店に来るのがあと数十分遅かったら、彼らのような亡者になっていたかもしれない。
あまりの暑さにたこ焼きの蜃気楼が見えた。そんな気がした。
夏の魔物とはたこ焼きの謂なのだろう。




2016/08/22 01:05 |雑記COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

日常から遠く離れて


アルバム『i could be free』(1997)のジャケット。

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俺は別に世代ではないし、原田知世のファンってわけではないけれど、このジャケットの彼女はかなりいい。
生活を感じさせないカラッとした雰囲気。
日常を消滅させる永遠の詩性。

中島らもは、あるエッセイにて稲垣足穂の
「結婚するということは、恋愛という『詩』から日常という『散文』へと下っていくことです。」
という文を引用し、こう述べている。

 極端に言えば、恋愛というのは一瞬のものでしかないのかもしれない。
 唇と唇が初めて触れあう至高の一瞬、そこですべてが完結していまい、それ以外は日常という散文への地獄下りなのだ。
 ただし、その一瞬は永遠を孕んでいる。
 その一瞬は、通常の時間軸に対して垂直に屹立していて、その無限の拡がりの中に、この世とは別の宇宙がまた一つ存在しているのだ。
 「昨日テキサスで始まった恋が、四千年前のクレタ島で終わる」
というのはトマス・ウルフの言葉だけれど、今夜、街のどこかで向かい合っている唇と唇の間の何センチかの中に、永遠の時間と、無限の距離と、そして無数の激痛をともなう夜々がうずくまっているだろう。



詩的な恋愛が散文的な日常、生活へと変化することは宿命的に避けられぬことだろう。例えば、カフカやキルケゴールの結婚への葛藤をここで引き合いに出すのは通俗的だろうか。でもやはり、そういったことはあるんじゃないか。そして俺は彼らに勝手に共感してしまうのだ。

だからこそ、『i could be free』のような女の子とパン屋の駐車場で出会い、物語が始まるならば、もうあとはいらない、と俺は思うのである。
日常から遠く離れて、永遠という彼女の手を握りしめて、公園の芝生に座る。風は現実を運び去る。日常は追ってこない。絡みつくような生活の触手は動きを止め、この精神は自由を得るだろう。

そんな女の子は存在しないということもまた俺は知っているのだけれど。



2016/08/13 23:14 |雑記COMMENT(2)TRACKBACK(0)  

宮沢賢治の透明性


「賢治が人間と人間の関係性といったところからこぼれ落ちたところに自分の世界をかろうじて設定しえたという、どちらかといえば受動的な態度にあるように思える。」
これが宮沢賢治作品の持つ透明性の根拠であると川本三郎は書いている。

「『銀河鉄道』一編のなかに思う様ばらまかれているのは、青白い光や、紫色の石や透明な空気などといった、カチッとした美しい鉱物的なイメージの数々である。」 と澁澤龍彦は書き、宮沢賢治作品の宗教的でヒューマンな敗北意識よりも、数々の無機質イメージが自分には親しみやすく嬉しいと言っている。

わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾いくきれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。

『注文の多い料理店』 序 





2016/08/10 20:15 |雑記COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

ポケモンマスターへの長い道


トレーナーレベルが11になった。
しあわせタマゴを使ってポッポ進化祭りを実施して、ようやく11だから、ちょっとスローペースすぎるかもしれない。熱意はあるんだけど、それ以上に太陽が熱いのだ。
あれだけポケモンGOのことを書いておきながら、まだ11かね! という声が聞こえてきそうだが、田舎をなめちゃいけない。ポケストップの数が少なすぎるし、今年の夏は暑すぎるし、毎日イオンに行くわけにもいかないし、花を入れる花瓶もないし、嫌じゃないし、カッコつかないし(by電気グルーヴ)。

それにしても、近所のジムにLV32のプレイヤーがいたけれど、インチキをしていない天然物だとしたら、相当すごい。どれだけ歩き回っているのか。伊能忠敬か? ちなみにCP2500のラプラスを配置していた。関係ないけれど、ラプラスって『ドラえもん のび太の恐竜』に出てくるピー助を思い出す。そう思って画像検索したらそんなに似てなかった。
いずれにせよ、低レベルの俺にはジムは無縁の場所だ。

そんな遅々としたポケモンGO生活を送っているわけであるが、昨日は図書館に行った。もちろん、本を借りる為に行ったわけだけど、それとは別に噂では図書館の付近にはポケストップも多く、それに珍しいポケモンが出没するということを聞いていたので、そのことが頭になかったといえば嘘になる。けれども、あくまでついでだ。

家から図書館まで車で20分位か。図書館に着く頃には俺の頭の中はポケモンのことで満たされていた。ポケモンGOならぬポケモン脳である。
駐車場に車を停めるなり、さっそくポケモンGOを起動。

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この大量のシルエットはまだ見ぬレアポケモンなのだろうか?
いや、コイキングってやつだね?
今だにコイキングがシルエット状態(未ゲット状態)なのも泣けるし、レアポケモンの気配は微塵もないし、花を入れる花瓶もないし。


2016/08/09 01:32 |雑記COMMENT(2)TRACKBACK(0)  

フォームを忘れてしまう


最近、ブログの更新ペースが落ちている。
書きたいとは思うものの、睡眠不足のせいで書けない。
ブログ書くかな、何書こうかな〜、と考えているうちに睡魔が襲ってくる。
恐ろしい睡魔に俺はあっさりと屈するわけだ。
だから、今日も大したことを書かずに終わる。

まぁ、無理してブログを書くこともないわけだからそれでいいのだけど、素振りを続ける野球選手のように、どんな駄文であれ、ある程度の文章は書き続けたほうが良いのだと思う。

それでも今の俺は睡眠の誘惑に勝てないのだけど。
そうやっていとも簡単にフォームを忘れてしまうのだろう。
いや、そもそも俺にはフォームなんてものがあったのかしら?


2016/08/08 01:32 |雑記COMMENT(4)TRACKBACK(0)  

忘却


「忘れるということは復讐の唯一の形式であり、また相手を許す唯一の形式だと思います。」
侮辱されたことに拘り続ければ相手に縛り付けられていることを意味し、これみよがしに相手を許したとすれば虚栄でしかない。忘却しろ。とボルヘスは言うけれど、一般的にそれはけっこう難しいことではないかい。
俺はかなり忘れっぽいのでその点助かるけれど。

そんなことより、早く野生のピカチュウをゲットしたいぜよ!

2016/08/02 00:04 |雑記COMMENT(2)TRACKBACK(0)  

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