100年後


やさしさを残してクリスマスは終わってしまった。
今年、引越しの際に折口信夫の『古代研究』とコメニウスの『世界図絵』を売ってしまったのは少し後悔している。特別に高価な本でもないのだけど、一度売った本を再度買うのはどうも躊躇われる。

やさしさを残してクリスマスは終わってしまった。
サンタクロースは本を持って来なかった。かつてサンタが『世界図絵』を子供にプレゼントしたことはあっただろうか。多分あるだろう。世界最初の子供向け絵本とされているのだから。
『古代研究』は、ないか。
そういえば、サンタクロースというのも一種のマレビトになるのだろうか。

やさしさを残してクリスマスは終わってしまった。
あれは小学生の何年生だったか忘れたけれど、とある年のクリスマスの朝。
少年の俺は失意の底にいた。枕元にサンタのプレゼントがないのだった。毎年当たり前のように置かれているはずのプレゼントがないのだ。少年は呆然としていた。素晴らしき当然の世界は当然ではなくなった。悪しき方へと転変してしまった。そのように感じ取ったかもしれない。
すると、母親はそんな俺を見て、急に「ベッドの下の掃除をしなさい」という。
いやいや掃除なんかしてる場合じゃないよ、と思いつつもそうしたらどうだろう、以前から欲しがっていたガンダムのプラモデルがベッドの下に落ちていた。寝相が悪い俺は寝てる間にガンダムをベッドから落としてしまっていたのだった。
その時かもしれない。サンタという存在のメカニズムを掴みかけたのは。
このささいな朝の事を思い出すたびに、俺は胸をしめつけられるような気分になる。
この世界のなにかが暴露されたとしても、やさしさはひとつも失われなかった。


彼はたったひとつの場所に
無事にたった
折れかかった支柱の橋を
無事わたったかのように伝えている嘘にきっと気づかず
与えられてる嘘にきっと気づかずか



やさしさを残してクリスマスは終わってしまった。



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2016/12/26 03:05 |雑記COMMENT(4)TRACKBACK(0)  

デビルビームは熱光線


俺はどうも運転席に座ると少しだけ短気になるようだ。
昨日の昼間の話。コンビニを出て、愛車に乗り、駐車場から道路に入ろうとすると、交通量が多いのでなかなか道路に入れなかった。ようやく車が途切れたと思ったら、微妙な車間距離をあけて一台のミニバンが走ってきた。俺は「あの車が通り過ぎたら」と考え、そのミニバンを注視していたのだけど、とんでもなく走行スピードが遅い。嫌がらせか? というくらい遅い。おそらく、時速10キロとか20キロ。

そしてやっとミニバンが目の前を過ぎようとしたところで、どんな奴が運転しているのだろうかと、ドライバーを確認した。さぞかし悪意の塊のような人間が運転しているのだろうと思っていたが、30歳位の営業職風のサラリーマンがアイス片手に呑気な顔で運転していた。もしかすると彼にとっては車内という場所が唯一の心の安らぐ場所なのかもしれない。そのひと時、彼は彼だけの世界に生きているのだ。そういうことだってあるのだろう。しかし、それはそれ、これはこれ。俺はイライラするのだった。

形状と色から推測するに、あの男が手に持っていたアイスはガリガリ君だ。
俺はつい、こんな寒い時期にガリガリ君を食うな!
と理不尽な暴言を吐いてしまった。無論、誰にも聞こえてはいないのだけれど。
もし俺にデビルビームが使えたら、あのミニバンは跡形も無く蒸発していただろう。
剣呑な話だ。


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2016/12/08 01:41 |雑記COMMENT(4)TRACKBACK(0)  

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