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俺は彼女にかける言葉を知らない


土曜日の昼下がりの喫茶店、色んな人達が思い思いの時間を過ごしているように見えた。
会話するカップル、新聞を読むお爺さん、打ち合わせをするスーツを着た男女、黙然としてコーヒーを飲む男、勉強する学生、フランスのサルコジに似た怪しい初老の男性。
俺はコーヒーを飲みながら静かに文庫本を読んでいた。もうかれこれ三十分ほど待ちぼうけを食らっている。

店内に大きな音が響いた。ウェイトレスの女の子がコーヒーをこぼしたのだ。困った事にこぼしたコーヒーはスーツを着た男にかかっていた。よくテレビのコントなんかで見かける光景だが、実際目の当たりにしたのは初めてだ。笑えはしない。ウェイトレスは慌てふためき、謝りながら必死で拭いていた。今にも泣きそうだった。男は、下着まで濡れてしまったかのような仕草をし、まるで台風に家の屋根を飛ばされてしまったような困った顔をしていた。
男はコーヒーを一口、二口飲んだ後、バツが悪そうに店を出て行った。

少しして、俺はコーヒーをおかわりしようとウェイトレスを呼んだ。
ウェイトレスはやってきた。コーヒーをこぼした女の子だ。さっきのミスがまだ心を覆っている事がその表情から見て取れた。
おかわりが欲しい旨伝えると、彼女は「おかわりですね!」と笑顔で返事をした。
それは危うげで儚く、今にも崩れそうだが、仕事を成し遂げようとする自恃の念に支えられた美しい笑顔だった。いうなればまさに「貝殻のふちを歩くような」と形容できる複雑で繊細で危うく美しい表情。
「大変だったね」と声をかけるのは簡単だが、それはスカしたポコチン野郎や立派な髭を蓄えた紳士の仕事だ。
俺は彼女にかける言葉を知らない。


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2016/01/17 00:10 |雑記COMMENT(4)TRACKBACK(0)  

コメント

こんばんは^ ^その店の社員はなにをしてたんだろうね。さっときて対応しないなんて。クリーニング代くらい出してほしかったね。
被害者も加害者もその場にいわあせたお客様もみーんな気の毒だ。気まずい雰囲気のまま終わるなんて。

No:221 2016/01/17 00:57 | ちさ #- URL [ 編集 ]

>ちささん
こんばんは。
同僚や上司がフォローすべきですね。
クリーニング代が出たのかどうか、分かりませんえん。
おっしゃる通り、みんな気の毒です。
悪意の存在しない出来事というものは、どこかやるせないものだ。

No:222 2016/01/17 06:43 | pipopan #- URL編集 ]

お久しぶりです。大分前に復活されていたんですねー。
お元気そうでなによりです。
また、お邪魔します☆

いやーー、私もそういうへましがちなので冷や汗が出そうです。。。
私もおろおろするだろうなーーー。多分。

No:223 2016/01/18 22:27 | 桃 雄子 #- URL [ 編集 ]

>桃 雄子さん
お久しぶりです。先月からブログ再開してます。
元気といえば元気なのですが、最近は寒さが身にこたえますね。はやく春が来て欲しか〜。

また、よろしくです。

No:224 2016/01/19 06:39 | pipopan #- URL編集 ]

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